派遣薬剤師ってどうなの?派遣法改正によってキャリアを見直すべき

2020年4月1日から改正労働者派遣法が施行されます。

レルこの法律の施行によって、派遣社員として働く薬剤師からは「賃金が上昇し、働き方が見直される」などと喜びの声が上がっています。

しかし一方、これまで派遣薬剤師を多く雇用してきた薬局やドラッグストアからは「負担が重くなる、派遣薬剤師の雇用について見直しが必要」などの声も上がっています。

そのため、結論からお伝えすると、今後は派遣薬剤師の需要が減少する可能性があります。

派遣薬剤師のみならず、薬剤師としてキャリアを築くにあたっては、大きな局面を迎えることになりそうです。

そこで、この記事では改正労働者派遣法の施行による派遣薬剤師を取り巻く変化今後の薬剤師に求められるキャリア構築についてお伝えしていきます。

この記事を読んで欲しい人

  • 派遣薬剤師として働いている人
  • 派遣薬剤師を検討している人
  • 薬剤師としてのキャリアに悩んでいる人
  • 施行される労働者派遣法について

    まずは、改正される労働者派遣法の概要をお伝えします。

    今回の改正の目的は「同一労働同一賃金」です。

    つまり、派遣会社に対して勤務年数や能力に応じた賃金支払いを義務付け、派遣社員と正社員との賃金差の縮小を目的とした法律改正です。

    この改正により、雇用主側は「職務内容が同じであれば(同一労働)、雇用形態に関係なく同じ金額の賃金(同一賃金)を支払う」という義務が発生することになります。

    労働者派遣法の施行日は2020年4月1日であり、事業規模にかかわらず一斉に施行されるため、薬剤師を雇用する全事業者が対象です。

    施行されることとなった背景

    法改正の背景には、少子高齢化による労働人口減少への対策として政府が推進する「働き方改革」が影響しています。

    雇用による格差の固定化を回避し、働き方を多様化することで労働人口不足の現状を打破するための取り組みをするといった背景があります。

    なお、改正される内容は主に下記の3つです。

  • 派遣社員の賃金決定方法の厳格化
  • 派遣先から派遣会社への情報提供の義務付け
  • 派遣会社から派遣社員への説明義務付け
  • ここからは、改正される3つの内容についてお伝えしていきます。

    派遣社員の賃金決定方法の厳格化

    派遣社員の「同一労働同一賃金」を確保するため、厳格な賃金の決め方が定められています。

    具体的には、派遣会社は次のいずれかによって派遣社員の賃金を確保することが義務化されることとなります。

    義務化される内容

  • 派遣先均等・均衡方式:派遣先の通常労働者との均等・均衡待遇
  • 労使協定方式:一定の要件を満たす労使協定による待遇
  • 派遣先均等・均衡方式

    派遣先均等・均衡方式は、非正規雇用労働者の待遇を派遣先の正規雇用労働者と、均等・均衡することを実現とする方式を指します。

    この場合の待遇は、「基本給」「賞与」「手当」「福利厚生」「教育訓練」「安全管理等」です。

    「均等待遇」もしくは「均等待遇」のどちらかを求められるかは、非正規雇用労働者である派遣労働者と、比較対象となる派遣先の正規雇用労働者との間で、「職務内容」「職務の内容/配置変換の範囲」が同じかどうかによって決定されることとなります。

    均等待遇の場合
    均等待遇の場合は、派遣先と同一の待遇決定方法であることが、求められます。

    均衡待遇の場合
    不合理な待遇差であるかどうかは、個々の待遇ごとに、待遇の性質・目的に照らして、適切と認められる事情が考慮されます。

    労使協定方式

    労使協定方式は、労働者の過半数が所属する労働組合と派遣元企業の間で、待遇に関する労使協定を結ぶ方式です。

    労働者が過半数所属するような労働組合がない場合は、「労働者の過半数を代表したもの」と、書面で労使協定を結ぶことになります。

    基本的に、賃金決定の協定を結ぶ際には、「一般の労働者の平均的な賃金と比較して、同等以上の賃金となるようにしなければならない」を原則としています。

    この場合の「一般の労働者の平均的な賃金」とは、「派遣先の事業所地域で、同程度の能力・経験を有する人が、同種の事業に従事する際の平均的な賃金の額」になります。

    企業側は、「一般的な労働者の平均的な賃金」の額を決定する際に、職種、能力、地域、経験などの特性を加味しなければなりません。

    労使協定方式は、あくまでも企業側の労使協定が適切な内容で定められている、もしくは遵守している際に適用できる方式なので、どちらにも該当しない場合は、「派遣先均等・均衡方式」で適用します。

    まとめ

  • 非正規労働者か正規労働者かに関わらず、同じ労働に従事する者は同じ賃金を受け取るという原則
  • 正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間にある、不合理な待遇差を無くそう」という内容のルール
  • その結果、派遣事業における非正規労働者である派遣社員の待遇改善に繋がる。

    派遣先から派遣会社への情報提供の義務付け

    今回の改正によって、派遣先は派遣会社と労働者派遣契約を締結する際、派遣会社に対して「賃金等に関する情報を提供する義務」を負うことが新たに定められました。

    派遣会社が「派遣先均等・均衡方式」を採用した場合、派遣先からその従業員の賃金等に関する情報を提供してもらわないと均等・均衡の取れた賃金を決めることができないためです。

    つまり、派遣元は派遣労働者、派遣先などに対して、労働者の待遇をどのように決定しているかについての情報を提供しなければいけないことになります。

    ここで提供する義務がある「賃金等に関する情報」とは、あくまで派遣社員と同じ内容の仕事に就いている従業員(比較対象労働者)の賃金などに関する情報のことであり、派遣先で従業員の情報ではありませんので誤解のないようにしましょう。

    派遣会社が提供する義務のある情報

  • 比較対象労働者の職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲並びに雇用形態
  • 比較対象労働者を選定した理由
  • 比較対象労働者の待遇のそれぞれの内容(昇給、賞与その他の主な待遇がない場合には、その旨を含む)
  • 比較対象労働者の待遇のそれぞれの性質及び当該待遇を行う目的
  • 比較対象労働者の待遇のそれぞれを決定するに当たって考慮した事項
  • 比較対象労働者とは、下記の①~⑥の労働者を指しています。

    ① 「職務の内容」と「職務の内容及び配置の変更の範囲」が同じ通常の労働者
    ② 「職務の内容」が同じ通常の労働者
    ③ 「業務の内容」又は「責任の程度」が同じ通常の労働者
    ④ 「職務の内容及び配置の変更の範囲」が同じ通常の労働者
    ⑤ ①~④に相当するパート・有期雇用労働者(短時間・有期雇用労働法等に基づき、派遣先の通常の労働者との間で均衡待遇が確保されていることが必要)
    ⑥派遣労働者と同一の職務に従事させるために新たに通常の労働者を雇い入れたと仮定した場合における当該労働者

    派遣先企業が、①~⑥の優先順位によって「比較対象労働者」を選定します。

    そして、派遣会社は派遣先から必要な情報の提供がないときは労働者派遣契約を締結してはならないことも新たに定められています。

    つまり、派遣先も派遣会社から情報提供を求める声があった際に応じなければ、労働者派遣契約を締結することはできません

    また、派遣先で比較対象労働者の待遇について変更があった場合も、遅滞なく派遣会社に変更の内容に関する情報を提供しなければなりません。

    なお、情報提供を書面でする必要はなく、インターネットを利用して派遣労働者、派遣先などに対して広く知らせるなどの方法でも問題ないため、従事する側は派遣会社に確認をするようにしましょう。

    まとめ

  • 派遣会社は賃金等に関する情報を提供しなければいけない
  • 労働者の待遇をどのように決定しているかについての情報を提供する
  • 情報提供しなければ労働者派遣契約を締結することができない
  • 上記によって、これまで不透明だった契約条件や労働情報が開示され、不平不満を軽減することに繋がる可能性がある。

    派遣会社から派遣社員への説明義務付け


    派遣先から派遣会社だけへの情報提供だけでなく、派遣会社から派遣社員への情報説明も義務付けられています。

    雇用時・派遣時の説明

    派遣会社は雇用時と派遣時の両方で派遣社員に対して、あらかじめ下記の事項を説明しなければいけません。

  • 派遣先均等・均衡方式によりどのような措置を講ずるか
  • 労使協定方式によりどのような措置を講ずるか
  • 職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に関する事項を勘案してどのように賃金を決定するか
  • さらに、雇用時には、以下の項目も明示する必要があります。

  • 昇給の有無
  • 退職手当の有無
  • 賞与の有無
  • 労使協定の対象となる派遣社員であるか否か
  • 労使協定の対象であれば労使協定の有効期間の終期
  • 派遣社員から申出を受けた苦情処理に関する事項
  • これらを説明する目的は、派遣社員が不合理な待遇差を感じることのないよう派遣社員への待遇に関する説明義務を強化するためです。

    派遣労働者から求めがあった場合の説明

    派遣元事業主は、派遣労働者から求めがあれば、派遣労働者と比較対象労働者との間の待遇の相違の内容及び理由などについて説明しなければなりません。

    また、派遣元事業主は、派遣労働者が説明を求めたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこととされています。

    そもそも派遣法とは?

    労働者派遣法、いわゆる派遣法とは、正社員に比べて不安定な雇用状況である派遣社員が弱い立場に追い込まれるのを防ぐ法律です。

    派遣社員は勤務日数や曜日など労働形態を柔軟に決められるというメリットがある半面、ボーナスが発生しないため正規雇用に比べて年収が少なく、一定の基準を満たさなければ健康診断を受けられないといったデメリットがあります。

    また、不足人員に対する期間限定での補充といった側面も否めず、派遣先企業の都合で派遣契約期間が終了となることが多いのも事実です。

    そ子で、派遣社員の権利を守り、就業条件や賃金、福利厚生などの認定を目的に制定されたのが「派遣法」です。

    正式名称は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣社員の就業条件の整備等に関する法律」といいます。

    改正労働者派遣法による薬剤師を取り巻く環境の変化

    冒頭で少し触れましたが、改正労働者派遣法によって、派遣社員からは「待遇が改善される」といった喜びの声がある一方で、賃金の上昇による受け入れ企業の負担が重くなり、派遣薬剤師の雇用について見直しされる可能性があります。

    つまり、企業側の雇い止めが増えるため、派遣薬剤師が減っていく可能性があるということです。

    実際に、薬剤師の転職支援をしているキャリアアドバイザーに対して、派遣から正社員やパート勤務への転換を希望する相談が増えているとのことです。

    相談をする理由としては、

  • 派遣先での更新が終了した
  • 希望を満たす求人が無くなってきた
  • 派遣会社から派遣先を紹介してもらえなくなった
  • が多いそうです。

    また、そういった相談が増えている背景には、雇用主側の派遣薬剤師に対する雇用の見直しが大きく影響しています。

    これまで薬局では、多くの派遣薬剤師を雇用することによって不足人員問題を解消していましたが、派遣薬剤師の賃金上昇によって見直しをしているところも多く、正社員やパートに切り替え始めているそうです。

    そして、大手ドラッグチェーンの多くは、派遣薬剤師の採用ではなく新卒薬剤師の大量採用に方針を転換しており、新規出店のニーズとあいまって新卒薬剤師の争奪戦が激化しています。

    まとめ

  • 正社員やパートへの転換を相談する薬剤師が増えている
  • 薬局側ではパートや正社員へ採用方針をシフトしている
  • 大手ドラッグストアでは新卒薬剤師の採用が激化している
  • 改正労働者派遣法によって、派遣薬剤師として働いている人も企業側を取り巻く環境は変化しており、薬剤師としてキャリアを構築するためにも働き方を見直す必要がある。

    薬剤師に求められる今後のキャリア構築


    薬剤師の転職市場は、以前から”売り手市場”といわれています。

    求人数に対して薬剤師数が不足しているため、企業・医療機関は好条件を提示しないと薬剤師が集まらない状態にあり、薬剤師にとっては、多くの企業から内定を獲得しやすく、条件の良い転職先を選ぶ余裕がある状態でした。

    しかし、厚生労働省の薬剤師の受給予測によれば、薬剤師の業務に変化が無い場合、これから数年間需給が均衡し、長期的には薬剤師は余るといわれています。

    「調剤業務のあり方について」が記載された0402通知にもある通り、非薬剤師でも可能な業務の明確化による業務シフトやAI・ロボット導入による代替など、業務の効率化の流れもあるため、薬剤師の供給過多の傾向はさらに強まっていくことが予想されます。

    0402通知では、ピッキングなど一部の作業について、要件を満たせば薬剤師以外の職員が代行できることが明示されました。

    これにより、薬局・ドラッグストア業界では、薬剤師よりも低い年収で作業を代行できる医療事務(テクニシャン)の採用を強化し、薬剤師の採用を抑える企業が出てくる恐れもあります。

    そのため、今後の薬剤師に求められる仕事やキャリア構築についても変化をせざる得ない状況にあります。

    今後、買い手市場化が進むなかで薬剤師として市場価値を高めるためには、他職種や機械が代行できない業務で専門性を発揮していく必要があります。

    対人業務に注力し患者から信頼される「かかりつけ薬剤師」や「在宅への対応などができる専門性」にプラスアルファを必要とされる業務の高度化は必然の流れと言えるでしょう。

    今回の記事で取り上げた派遣薬剤師だけでなく、全ての薬剤師が自らの役割について真剣に考える転機にさしかかっているのかもしれません。

    薬剤師のキャリア相談なら

    現在はまだ薬剤師の人員が不足している事業所も多いことから、あまり実感できない薬剤師も多いかもしれませんが、厚生労働省のデータによると薬剤師数は年々増加傾向にあり、それに伴い有効求人倍率も減少傾向にあります。

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